その日、オレたちは戦場にいた。 大名達が起こした、くだらない理由のくだらない小競り合い。お互いに戦力を引くタイミングを待っているような戦況だった。 砂の忍も支援にかり出されているらしいとは聞いていたが、まさかオレの属する部隊と交替するのがあいつの部隊とは…。 テマリは、部隊の中に在っても目を引く。中隊長ならなおさらだ。 オレの部隊の中隊長が引き継ぎ事項を確認するために近づくと、部下と地図を見て何か話していたテマリが顔を上げる。 まばたきするくらいの一瞬、中隊長を透かすようにあいつと目が合った。緑の瞳が見開かれたように見えたけど、気のせいかもしれない。 テマリは、実戦から戻ったばかりのようだ。背中の扇には血と泥の飛んだ跡があり、顔や腕には生々しい切り傷がいくつか走っている。髪の結び目はゆるみ、後れ毛が汗で頬に貼りついて、妙に艶めかしかった。 その姿は、いっそう男達の目を引く。周囲の木ノ葉の忍たちもテマリに視線を投げては、隣の仲間に小さく耳打ちしたりしていた。 オレは得体のしれない、何か黒々とした感情が自分の中に渦巻くのが分かった。 「よぉ、奈良」 先輩の中忍が、肩に手を置いてくる。 「何スか」 「あれが有名な砂のテマリか?」 「たぶん、そうっスね」 「気ィ強そうだけど、佳い女だなぁ。お前知り合いだよな?」 ああ、なんだろう。この、喉の奥に硬くてぎざぎざした物が詰まっているような気分は。 「ウチの親父の知り合いなんで、オレはあんまり」 知り合いだよな?の次に何を言われるかは想像がつく。オレは首を振り、先輩中忍の手から逃れるようにその場を離れた。 すぐに夜が来た。 正式な交替は夜明け直前に行われるということで、今晩は共同で見張りの任務につくことになった。戦争をやめたがってる相手が奇襲をかけて来るとも思えなかったが、お互いの部隊の半数ほどが木の上や高く築いた塹壕の中で哨戒に当たる。 オレの小隊は待機を命じられた。下忍達に忍具の点検と休息を言い渡して隊を離れる。 指揮所が置かれた天幕から遠ざかり、味方側の領地である森へ分け入っていく。人のいないところで、気持ちを落ち着かせたかった。何を動揺しているんだろう。テマリが戦いに出るのはこれが初めてじゃない。よくやってることだ。砂の里にはくノ一が少ないから、目立ってしまうのもあいつのせいじゃない。声をかけてくれないのは、属する里が違うんだから当然だ。しかもあいつは中隊長なんだ。軽々しいことができるはずもない。 いろいろと考えをめぐらせ、感情的になっている自分をなだめてみた。草を踏みしめて、夜風に当たって。 視線の先に、小さな小屋が見えてきた。火薬や武器の予備を雨から守る急ごしらえの小屋だ。横になる場所くらいあるかな、と思って近づく。 「誰だ」 ふいに、横から声が飛んできた。ばっと身構える。 「お前……」 そう言ったのは、同時だった。 手拭いを手にした、テマリが立っていた。人混みから離れて、体を拭いていたらしい。金属の胸当てを外し、上着の合わせをゆるめている。 白い胸元が、目に入った。 あの、言い表しようのない苦しい塊が、また喉に詰まる。 「来い」 オレはテマリの腕を掴み、ぐいと引いた。 「何を……」 テマリが言いかけるが、無視してそのまま小屋の中へ引き込む。中は棚だらけで予想外に狭く、麻袋や紐で束ねられたクナイなどがびっしりと並べられていた。隙間といえば、小さな窓の側に人ひとりが立てるくらいだけ。そこへ、テマリの肩を押しつける。 「シカマル!」 不意をつかれて抵抗できないままだったテマリが鋭くオレの名前を呼んだ。緑の瞳が、驚きとかすかな怯えに彩られている。それさえも綺麗だ、と思う。 「どうしたんだ?お前なんか変…んっ」 続きは言わさず、肩を掴んでいた手を腕にずらして口づけた。唇を舐め、甘噛みし、舌を差し入れる。テマリはとまどいながらも、応えてくる。すこしだけ、胸苦しさが楽になった。 散々舌をからめて顔を離すと、細い唾液の糸が唇と唇を繋いだ。はぁっと、テマリが苦しそうに息を吐く。何度深い口づけを繰り返しても、こいつは決して慣れない。息継ぎの仕方を知らないのだ。オレはその上気してくる頬が好きだから、教えてやらない。 唇を濡らしたまま、テマリの鎖骨に当てた。かすかに汗のにおいがする。そして血のにおいも。かまわず、舌をつけて舐める。舌先を尖らすように、ゆっくりと舐め上げる。 「やめ…ろ」 テマリの声も、押さえつけた腕も震えていた。でも、無視する。 耳に続く首筋の途中に、小さな切り傷があった。たぶん今日できたばかりの、新しい傷。まだ血が乾いていない。その傷を丹念に舌先でたどる。滲んでいる血を吸うように口づける。 「はぁ…っ」 テマリがため息と共にのけぞった。体の力が抜け、オレが押しつけている小屋の壁に背中を預けていく。痛いのか、感じてるのか、その両方か。 耳の下まで舐め上げたところで片腕を離し、テマリの胸に当てた。やわらかい重みを掌で包んで、上着の上から掴むように揉む。強く、弱く。親指と人差し指で堅くなりかけている乳首を挟んでこすると、テマリの体がびくっと反応した。間違いない。感じてる。もう片方の乳房も同じように弄ぶ。 たたみ込むように、舌で耳の溝をなぞった。 「ぅあ…いや…」 そんな甘い声で言われても、効果はない。むしろ勃ち上がりかけたオレのものを熱り立たせるだけだ。 焦れったさをなだめながら、オレはテマリの胸から手を下ろし、服の裾の合わせ目へしのばせた。硬く編まれた細い鎖の帷子が、しっとりとして滑らかな左腿を覆っている。そこを過ぎて、もっと奥へ。 薄い下着の上から、足の間の溝をなぞる。テマリは腿を寄せて抵抗したが、オレの指の方が早い。中指で溝を撫で、親指で小さな芽のある辺りを押す。何度も繰り返すと、指にはっきりと感じるほど湿ってくる。正直な体。 「んんっ…」 テマリが声を抑えて呻く。オレはその瞬間を逃さず、下着を横にずらして指を中へ入れた。とろりと濡らす熱い蜜。いつにない濃度でからみついてくる。 「すっげー濡れてるぞ、おまえ」 オレは耳を舐めていた舌を引き、息を吐きかけるように囁いた。テマリの表情をうかがうと、赤い顔をして目をぎゅっとつぶっている。 なんだか、自分がおかしい。妙に嗜虐的な気分だ。テマリの恥ずかしさに耐えてる顔がたまらない。 オレはテマリの腰も壁へ押しつけ、ズボンの前をゆるめた。滴を浮かべて硬く勃っているオレのものを引き出し、ぐいとテマリの右足を腕で抱える。花弁に溜まっていた蜜が、つつっと床に立った方の左腿へ伝った。なんていやらしいんだよ、おまえ。 「シカマル……」 今まで、こんな体勢でしたことはない。テマリが驚いたようにオレを見て首を横に振る。その不安を打ち消すように、オレは腰を少し下げ、腕に抱えたテマリの腿を引き寄せた。すでに蜜を流している洞の入り口に、先端をあてがう。一気に奥まで打ち込む。 「…はっ…ああぁん!」 テマリが高い声で啼いた。同時に、オレのものをぎゅっとすごい力で締め付けてくる。 「声…出すなよ。誰か来たらどうする…」 自分に余裕がないことをごまかすように言った。テマリはオレの肩を握り、唇を噛んでうつむく。 今度は少し抜き、ゆっくりと挿れる。立っているせいか、いつもよりさらに狭く感じる熱い洞を、かきまわすように味わう。奥を突くとテマリの腰が逃げるので、オレは胸を密着させ、壁でテマリの体を完全に挟む。そしてまた腿を引き寄せる。これで逃げ場はない。さらに奥深いところを目指した。腕に力を入れ、しつこいほど律動する。 「…あっ…ん…ああっ…」 堪えようとして洩れる細切れの喘ぎ声は、この殺風景な場所に不似合いなほど色めいていた。テマリの肉壁は別の意志があるようにオレのものを包み、絞め込む。こめかみがズキンと脈打って、射精感が腰からせり上がってきた。限界。本能がそう告げる。 オレはテマリの腿を抱え直し、ゆるゆると焦らすように浅く抜き差しした。本人に自覚はないのだろうが、テマリの腰がもどかしげにうねる。その瞬間を、オレは逃さない。 また、胸でテマリの体を抑え込み、差し入れた。狭く閉じかけた最奥へねじ込むように突く。ずぶずぶと、何度も。快感にゆがむ視界に、テマリの白い喉が映った。 「……はぁっ…!」 「…んっ」 ほとんど同時に小さく声を上げ、オレたちは果てた。 テマリはオレに背を向け、ずれた腿の鎖帷子を直している。 「なんつーか、スマン」 オレは素直に謝った。平静にかえると、いつもよりずいぶん手荒にしてしまった、と思う。何のことはない。オレは子供じみた嫉妬をしていたんだ。 「…いいから、謝るな」 テマリはそう言って上体を立て、オレの方をむく。でもオレの顔は見ない。 「謝られたら、ハズカシーんだよ」 ぶつぶつと、口をとがらせて続けた。照れている。まぁ、あんな声、上げてたし。いつもと違うのも、もしかしてちょっとよかったのかもしれない。でもそれを言うと後が怖いので止めておく。あの扇のカドではたかれるのは痛すぎる。 ふと気づくと、テマリが目の前にいた。 ぱっと両手を広げ、ぎゅっとオレを抱きしめてくる。こいつからなんて、めずらしい。 「・・・どした?」 思わず訊いてしまった。 「もう、戦は終わりかけだが、ケガするな」 中隊長らしい、命令口調のぶっきらぼうな言い方。でも、これがこいつのせいいっぱいの優しさなんだ。今のオレにはそれが分かる。 「オレはおまえと違って後衛だから心配ねェよ」 テマリの後ろ頭に手を当てて、ぽんぽんと押さえた。安心しろ、と想いをこめて。 「それでも、だ!」 テマリはさらに言う。ムキになったその言葉がうれしくて、おもわずオレはにやりと笑った。 あ、やべっ。笑ったりしたらどやされる。 攻め度強のシカマル。ちょっと嫉妬してます。 えー。裏部屋だからぶっちゃけますが、シカマルは絶対言葉責めが好きなタイプだと思います(キッパリ)。 |